2022.03.14

 

駅のホームに、真っ黒のスーツには似合わないような紙袋を持ったおじさんがたくさんいて、今日がホワイトデーだと気がついた。

残業をした帰り道に、少しだけ笑えて、心が少し軽くなった。

 

その気持ちを持ったまま到着した乗り換え駅のホームで、帰りの電車が運転を見合わせていることに気がついた。全部クソだ、とあっという間にさっきまでの気持ちがどこかへ飛んでいってしまった。本当に嫌気が差すほど私は単純で人間臭いな、と思った。

 

いつ動くのかわからない電車に座って、昨日一年ぶりに会った友人のことをなんとなく思い出していた。

過ごした時間の長さや、交わした言葉の数。私にとって彼は、様々な思考を共有して認め合おうとしてきた人だった。だからこそ、久しぶりの再会でも、すぐにあの頃みたいに絶えず話し続け、笑い合えると思っていた。会えるのが楽しみだった。

実際、彼と過ごした時間はとても楽しくて、普段はあまり話すことがないような話もたくさんして、いつものノリで何度も笑い合った。でも、あの頃に戻ることはもうできないんだと、しっかりとわからされたような気がする。原因がわからない、でも、もう埋まることがない溝が私と彼の間にあるような気がして、なんだかすこし寂しい気持ちになった。大人になってしまったんだろうか。

 

 

一人が好きなくせに、他者からの影響をもろに受ける私は、その時期に近くにいる人にどんどん似ていく。めちゃくちゃ寄っていく習性がある。

これが私はすごく嫌いで困っていたけれど、最近はもう諦めがついて、好きなだけ似せてってくれ、と自分に対してどこか他人事のように思っている。

 

わたしの周りにいる人も少なからず移り変わっている。そうやって、何人もの人たちと関わって、もらったそのすべてを私のフィルターで濾過して、それでも残った1つ1つの要素を自分自身で好きだと思うことができたらいいな、と、最近はそんなふうに思っている。他者を理解しようとすることで、自分を知ることができるっていうのは本当みたいで、相手を見ているようで、相手の瞳の中に映る自分のことを見ているってのもあるのかもなと思った。自分らしさなんて、まだ私にはない。そう思うことでもっといろんなことを吸収し続けられる人でありたい。

だから、早くこの状況から脱しなきゃな。身の回りを好きな人たちだけで溢れさせたいな。なんてことを一人考えていると、そりゃああんた、頑張りどころなんじゃない?と私の中のおばさんが活気づけてくれる。頑張ろうね。

 

まとまらない脳内の言葉をかき集めてみたはいいが、結局何が言いたいかは全然まとまらない。でも何も始めないと始まらないしな、と思って書いてみた。

これも結局は、好きな人の真似でしかないけど、まぁ、動機なんてなんでもいいしな。動くことでしか意味は生まれないしな、とかそれっぽいことを考えて、小言ばかりの自分を黙らせた。

 

家に帰ると、机にはチョコが置いてあって、冷蔵庫の中にはケーキが入っていた。

なんだか安心して、泣きそうになってしまったのを、いや〜残業した甲斐があったね!と言って誤魔化した。

馬鹿みたいに単純な自分のことも、そんなに悪くないと思った。

春の匂いがし始めた日に、リビングは幸せの匂いがした。